ホーム > クリエイトの眼 > 第4回 「世界標準の技術を導入する先駆者となれ!」

クリエイトの眼

第4回 プロジェクトセンター システム5室 シニアデスク 小林 展英

私がコンピュータに初めて触れたのは小学生のころに父親が買ってきたNEC製のPC-6001というパソコンに触れたときでした。  雑誌に掲載されたBASICのプログラムをひたすら打ち込んでゲームで遊んだ記憶が残っています。  この頃、機械仕掛けではない仕組みでモノを動かすソフトウエアという技術の魅力に取り付かれたのかもしれません。
当時、富士通、シャープなどがそれぞれパソコンを発売していましたが、今のパソコンのようにソフトウエアに互換性はなかったですね。  その後、Windowsが登場して互換性を生み出し、さらにWindows95の登場でインターネット時代が幕を開けて、いまではネットワークを介してパソコン間がつながるのは当たり前の世界になりました。

プロジェクトセンター
システム5室
シニアデスク
小林 展英
制御システムのソフトウェア開発者として、第一線で活躍。現在、AUTOSARの考え方を適用した車両システム開発の構築プロジェクトの統括とマネージメント業務を担当。

一方、クルマの世界に目を向けると、機械仕掛けの仕組みにソフトウエアが搭載され、いまでは数万、数十万行のソフトウエアが搭載されることも珍しくなくなってきました。  ただし、クルマの世界にはパソコンの世界と決定的に異なることがあります。  クルマという製品は、極端な話をすると、航空機並みの品質を家電並みのコストと期間で生み出す必要がある製品です。  それを実現する技術を確立するためにはやはりパソコンの世界以上に長い年月が必要になってきます。

例えば、私がデンソークリエイトに入社したのは10年ほど前になりますが、その頃に生まれたOSEKというリアルタイムOSの技術は、ここ数年でやっと開発現場で認知され、安心して使われるようになってきました。  このように、自動車業界におけるソフトウエア開発技術は生み出すまでに長い年月を要し、またそれを開発現場に浸透させて使いこなす域に達するまでにさらに長い年月が必要となります。  新しい技術の開発とその技術を開発現場に浸透させる活動が今日の自動車業界を支える両輪と言っても過言ではないと思っています。

AUTOSARという世界標準技術の登場。

昨今の高機能なクルマを支えるシステムの大規模、複雑化は目を見張るものがあり、ハイブリッド自動車、電気自動車の発展とあわせてこの流れはさらに進むと予想されます。  これまで高い品質を維持してきたクルマ作りは、人と人とのすり合わせに頼って支えてきた面が多大にありますが、人の力だけでこの流れを泳ぎ切るのは徐々に限界が近づいていると感じます。
こうした時代の流れに応えるために、欧州を中心としてAUTOSARと呼ばれる技術が登場してきました。  AUTOSARという技術は、複数の機器から構成され、さらにその機器が互いに協調して実現される自動車の機能を、“より安全に”、“より効率よく”開発することを目指した技術になります。  この技術を実現するために、クルマの開発に必要な開発手法や開発環境、ソフトウエアプラットフォームの標準化が進められています。  また、機能安全(国際標準化機構[ISO:26262])といった時代のニーズに合わせた技術への対応も進められています。

AUTOSARを導入して技術者が幸せになれる環境づくりを進めるためには?

私は現在、AUTOSARという技術を開発現場に導入し、開発現場の技術者が幸せになれる開発環境の整備に取り組んでいます。  新しい技術を導入する時に一番重要なポイントは、新しい技術を単に導入することに注力するのではなく、開発現場が持つ過去の優れた技術を紐解き、新しい技術とうまく融合させる術を探すことです。  また、融合させることで生み出した新しい技術を開発現場の技術者が納得できるよう、その効果を実証していくことも重要なポイントです。  過去の技術の有効活用とユーザーである技術者自身が幸せになれる実感を持ってもらうこと、この2つを満足させることが私たちの仕事に求められる重要な要素になります。
なお、こうした取り組みをやり遂げるためには、クルマに関する過去の技術を幅広く知っていることと、新たな技術を取り込もうという積極的な姿勢の両輪が必要になります。  弊社には、ソフトウエア制御が自動車に搭載されつつあった時代からの技術が蓄積されています。  また、CMMやAutomotive SPICEの考え方を実際の開発現場に取り込み、世界標準の開発環境の整備も着実に進んでいます。  過去の豊富な技術知見と世界標準の開発環境、さらに若い人たちの新しい技術に対する積極的な姿勢の3つを武器として、自動車業界におけるソフトウエア開発を先導していく立場を担っていきたいものです。